―― 現在の日本の政治のどういったところを直していけばよいのでしょうか?
ひとつはみなさんの政治家のイメージと直結するところ。最初に述べたように、政治家のイメージは「選挙のことしか考えていない」とか、「仲間の政治家と高級料理屋で飲み食いしている」といった悪い部分が大きいですよね。ただ、こうしたイメージは、政治家個人個人の人間性などのせいにはできない。直してと言っても簡単に直すことはできない背景があります。
それはどうしてかというと、日本の政治家は、実際に選挙のことばかり考える必要があるためです。これは、候補者自身が自分の当落の責任をすべて負っているためです。
多くの先進諸国では、比例代表制などの制度によって、有権者は候補者ではなく政党に対して投票します。候補者に投票するような制度の場合でも、その候補者は政党の組織、人員に頼って選挙を行います。これを「政党中心の選挙」といいます。
これに対して、日本では「候補者中心の選挙」になっています。もちろん、所属している政党がお金を多少援助してくれたり、政党の公認をもらえると味方が増えたりもすることもあります。でも基本的には、候補者は自分でお金を集めて、自分の資産と人脈をつかって選挙を戦うわけです。そうすると、普通の若い人は立候補することもできません。
この結果、たとえ当選して国会議員になったとしても、地元の選挙区にしょっちゅう帰って人脈、金脈を維持する活動に努める必要がでてきます。国会議員という名前なので、国会周辺で政策について勉強したり議論したりしているのかと思いきや、そうではないのです。国会が終わったらすぐに地元に帰って、地元の支持者たちと交流を深めたり、お祭りや葬式などに顔を出したりし続ける必要があるのです。東京にいても、「政治資金パーティ」を開催するなどして、集金に努めています。
わたしたち一般の人々から見れば、「国会周辺での仕事を優先しないなんてけしからん」となりますが、国会議員にしてみれば地元を大事にしないと自分が生き残れないのです。それに、どんなに素晴らしい政策を提案し、それを実現したいと思っていても、選挙に勝たなければそれができない、許されないわけです。
―― 勉強していると支持者に文句をいわれてしまうわけですね。
そうです。地元で熱心に応援してもらっている人から、「あいつは選挙区に帰ってこない。地元の面倒をみないダメなやつだ。」と言われてしまう。そうすると、次の選挙では受からないかもしれない。でも、有権者たちの視点に立ってみると、かなりのお金と労力をかけて議員さんを応援しているわけですから、地元の面倒を見てほしいと思うのも当然ですよね。国全体の政策よりも、地元の声を聴いて、地元に利益をもたらす活動をしてほしいわけです。
しかし、それが結果的に日本全体からみると不幸なことを招いています。現在の選挙区ごとに議員を選ぶ制度のおかげで、各議員は地元のためにはたらくエージェントになってしまっている。つまり、どうにかして国から自分の地元に利益をもたらそうと国会議員ぞれぞれが競争している状態です。不景気を挽回するための施策が、道路やダム、公共施設などをつくる「公共事業」にかたよるのはそのためです。